糖尿病の治療薬は大きく分けて6種類あり、それぞれに特徴(メリット・デメリット)があります。その特徴を知り、自分の病態に合った治療薬を選択することが非常に重要です(図1図2)。


図1.経口血糖降下薬の選択


図2.主な経口血糖降下薬の特徴




【製剤名:ジャヌビア錠、グラクティブ錠、エクア錠】
 糖尿病治療薬の中では最も新しい薬剤です。インクレチン(血液中の糖濃度に依存してインスリン分泌を促し、血糖を低下させる役割を担う消化管ホルモン)の分解酵素であるDPP−4を阻害して、インクレチンの作用を促進させます。
 また、動物実験では、膵臓β細胞の数を増やす効果があることがわかっています。低血糖や体重増加などの副作用を起こしにくいのが特徴です(図3図4)。




【製剤名:メルビン錠、メデット錠、ジベトス錠】
 肝臓での糖新生を抑制し、筋・脂肪組織でのインスリン感受性を改善します。最近の研究では、糖尿病患者さんの全死亡率を低下させること(図5)、心筋梗塞の発症を抑制すること(図6)がわかっています。食欲を抑制する働きがあり、体重減少も期待できます(図7)。また癌の予防効果についても示唆されています。


図5.メトホルミンと従来療法の比較(全死亡)                    図6.メトホルミンと従来療法の比較(心筋梗塞)



図7.メトホルミンによる体重変化




【製剤名:アクトス錠】
 インスリン受容体に作用して、骨格筋、肝臓でのインスリン感受性を改善します。動物実験では、膵臓β細胞の保護効果も示されていますが、浮腫、体重増加等を引き越すことがあり、注意が必要です(図8)。


図8.チアゾリジンとグリニド薬の膵島細胞への影響




【製剤名:アマリール錠、オイグルコン錠、グリミクロン錠】
 膵臓β細胞に働き、服用後短時間で強力にインスリン分泌を促進します。長期に使用すると、膵臓β細胞を疲弊させて減少を招き、徐々に薬の効果が得られなくなる場合があります図9)。確実な血糖降下作用をもつ反面、低血糖に注意が必要です。(低血糖についてはこちらをご覧ください。


図9.SU剤の膵β細胞への影響




【製剤名:ファスティック錠、スターシス錠、グルファスト錠】
 膵β細胞に働きかけ、より速やかなインスリン分泌を促進します。必ず食事の直前に服用する必要があり、低血糖にも注意が必要です。(低血糖についてはこちらをご覧ください。
 SU剤同様、膵臓β細胞を疲弊させるため、長期の使用で徐々に効果が得られなくなる可能性があります




【製剤名:ベイスン錠、グルコバイ錠、セイブル錠】
 食事の直前に服用し、糖質の分解・消化を妨げることで、食後の血糖値上昇を抑えます低血糖症状は、SU剤と併用する場合に起きることがあり、その場合はショ糖では回復が遅れるため、ブドウ糖を摂取するようにします。(低血糖についてはこちらをご覧ください。)また、副作用として腹部膨満等が現れることがあります。
 最近の研究では、アカルボース(製剤名:グルコバイ)に、2型糖尿病の発症を抑制する作用や(図10)、心筋梗塞など心血管イベントの発症を強力に抑制する働き(図11図12図13があることがわかっています。


図10.α-GIの2型DM発症におよぼす影響                 図11.α-GIの心血管イベント発症におよぼす影響



図12.α-GIの心筋梗塞発症におよぼす影響                図13.α-GIの心血管イベント発症リスクにおよぼす影響


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