2型糖尿病は、父や母から受け継いだ糖尿病遺伝素因を有する方に、過食や運動不足など生活習慣の乱れや、肥満、加齢(老化)など、環境因子が加わることで発症します。しかしながら、それらの遺伝素因と環境因子が揃っても瞬時に糖尿病が発症する訳ではありません
 実際には、インスリン分泌不全(インスリンの分泌が少ない状態)とインスリン抵抗性(インスリンが効きにくい状態)をもたらす遺伝素因と環境因子が重なる結果、食後の血糖値上昇がもたらされ、ブドウ糖毒性(血液中にブドウ糖が増えることで、インスリン分泌が抑制され、インスリンの効きが悪くなる現象)が誘導されます。
 ブドウ糖毒性は、もとより存在するインスリン分泌不全とインスリン抵抗性を悪化させ、それがさらなる食後高血糖を生む一方で、空腹時血糖の上昇をももたらします。すなわち、血糖値は慢性的に高い状態となり、ブドウ糖毒性はさらに顕著となって糖尿病は進展することとなります(図1)。 以上のようなことから、境界型糖尿病、あるいは糖尿病発症早期に、食後高血糖を放置せずに早期に是正することこそが糖尿病の発症・進展阻止のために極めて重要です。

 また、食後高血糖はブドウ糖毒性を介して糖尿病の発症・進展に重要な役割を演じるのみならず、近年、それ自体が酸化ストレスを誘導することで動脈硬化性疾患の発症に深く寄与することが示されています(図2)。
 近年、相次いで開発された糖尿病治療薬の中には効率的に食後高血糖を是正する薬剤あり、糖尿病の進展阻止や大血管合併症(動脈硬化性疾患)の予防に向けて、それらを上手に活用することは糖尿病治療の最も重要な課題となりつつあります(治療薬についてはこちらをご覧ください)。


図1.2型糖尿病のメカニズム                        図2.酸化ストレスと動脈硬化



 糖尿病は今や国民病ともいわれ、糖尿病患者さんと糖尿病の可能性が否定できない方(予備軍)を合わせると、日本全国で約2210万人*1に及ぶといわれています。
 そのうち、医療機関で治療を受けている患者さんは237万人*2ほどしかおらず、いかに糖尿病に気がつかない人、指摘されても放置している人が多いかがわかります。
 糖尿病専門医の数は現在3,476人で、糖尿病患者さんの数(2,210万人)に比べて圧倒的に不足しており、身近に専門医がいないことが、受診をためらう原因の一つとなっているとも考えられます(図3図4)。
*1:厚生労働省 国民健康・栄養調査(2007年)より   *2:厚生労働省 患者調査(2009年)より



図3.糖尿病専門医と糖尿病患者の数                         図4.糖尿病患者数の推移


 糖尿病の症状は気付きにくく、多少血糖値が高いくらいでは全く症状のない人がほとんどです
 最近では、無症状の状態でうけた健診で指摘されることも多くなっています。しかし、糖尿病を「症状がないから大丈夫」と放置するのは非常に危険です。高血糖の状態が続くと、確実に糖尿病は進行し、動脈硬化等の合併症のリスクが高まります。
 大切なことは、まずは定期的に健診を受けて早期発見に努めること、食事や運動など日々の生活習慣を見直すことです。そして、生活習慣の改善では不十分な場合は、お薬を使ってしっかり血糖値をコントロールします。自分の病態に応じた適切な治療薬を選択することが非常に重要で、最近は非常に有望な新薬も発売されています。
 言われるままにただ薬を飲むのではなく、患者さん自身が病気についての正しい情報を知り、どのような選択肢や治療法があるのかということを、しっかりと理解して治療に望むことが大切です。




 軽症の場合、ほとんど自覚症状はありません。
 重症となり、顕著な高血糖状態になると、■喉が渇き水分を多く摂る、■尿の量や回数が多い、■疲れやすい、■体重が急に減る、■傷が化膿しやすくなる、■独特の口臭(ケトン臭)、■こむら返りがよく起こるようになる、などの症状が現れます。


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